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市漕連 e−rowシステム 拡張物語
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第1章  静かなる幕開け
それは、平成13年 春の市漕連理事会後、会長の私に対するささやきから始まった。

「Y君、エルゴメータにパソコンを接続して画面上で競漕するものがあるのを知っているか?」
「エッ? それってどんなシステムですか? 説明書とか図面とか無いんですか? 全体システムが分からないと我々に
出来るものなのか判らないですが、・・・・・。」
  (全体システムの理解や図面がないと話ができない技術屋の悲しい習性です。)
「私にも分からんが、『月刊ローイング』にそんな記事が載っていたよ。出来ないかなぁ。」
「エルゴのディスプレイから何らかの信号を取り出して、パソコンに取り込んで演算処理させているんでしょうが、
そのソフトはどこで手に入るんでしょう? ディスプレイもエルゴに付いているモノで良いのでしょうか?」
「さあ、分からないなあ。」
「・・・・・。」

こんな会話を交わしたが、私の頭の片隅から消えることなく、シーズンオフまで住み続けた。
インターネットであれやこれやと調べてみると、conceptU社に『e−row』というものがあることが分かった。
第2章  市漕連市民エルゴ大会に向けて (視覚に訴えるエルゴ大会への変貌)
何をやっているのか、傍目からは理解しにくい寂しい競技。 それがエルゴ競技会に対する感想。
「実験的要素を採り入れて、次に繋がる市民レガッタにしようよ!」と、スタッフで取り組んだ10月の大会が成功し、
次は3月のエルゴ大会が迫っている。
「エルゴ大会での実験的要素って何?」 例年の単にエルゴを引っ張るだけの大会では次に繋がる大会にはならない
ことは目に見えている。
「ここは一発、『e−rowシステム』を採り入れてみないか?」
エルゴ大会実行委員会を発足し、『視覚に訴えるゲーム性を採り入れたエルゴ大会への蹴り出し』が始まった。

e-rowのレンタル元と連絡を取り、システムの概要・必要設備などが徐々に分ってきたが、市漕連はもとより県下でも
このシステムを使った大会を行った人がいない中、大会までの準備は短期間で進んでいく。
エルゴメータの型式は、どのようなものが必要なのか? 市内3高校が持っているもので用を足すのか?
不安は募る。 事前に各高校のエルゴを確認に行き、機器の状態をチェックしてみる。
表示動作しないなど、かなり程度は悪い。A型エルゴは、ディスプレイの表示カケ、C型は、乾電池の液漏れ・緑青腐食
による接触不良。A型ディスプレイは分解しなくとも大方内部構造・故障原因が推測できた。(これは技術屋の特技です。)

レンタル元からのシステム資料を見る限り、e−rowシステムの設営は、我々にも出来そうなことが判った。
同時に送られてきたコマーシャルビデオも全体を理解し、我々のアイデアを盛り込むために参考となる貴重な教科書だ。

カネはない。でも、アルコールが入ると、アイデアは湧き出てくる。
エルゴ大会の実行委員会にはいつの間にか古参者も加わり、お好み焼き屋でワイワイガヤガヤ。
副会長発案の参加賞代わりの『記録認定証』は、パソコンプリンタからの即時発行システムを得て、会場に華を添える
ものに成長した。 
歓声しか聞こえない従来のエルゴ大会に『ロッキーのテーマ』などのBGMを流し、艇庫内でこだまして闘志を掻き立てた。
e−rowシステムの画面はもちろん、会場の状況をビデオカメラを通してプロジェクターで上映した。
メインスクリーンは、副会長や駅長が額に汗して作って頂いた手作り品。

レンタル元からオペレータを呼ばず、自分達の手で大会に漕ぎ付けようと、e-row機器を大会2週間前からレンタルし、
システム全体を初めて手に取り、設営・動作確認に取り掛かる。
送られてきた段ボール箱から器材を取り出し、見てみる。
「これはPCに繋いで、映像信号をプロジェクターに繋いで、ディスプレイをPM2+に取り替えて数珠繋ぎで通信させて・・・・。」
PCの電源を立ち上げて、デスクトップから『e-row』を立ち上げる。
「オーッ!」 メニューバーからスタートボタンをプルダウンし、スタート。 『e−row』が動き出した。
「当日の操作は、NBさん君達に任せたよ。」 彼らもここがスタート地点となり、e-rowシステムにドップリ嵌っていく。
パソコンと映像機器を触ったことがあれば、使えるレベルのシステムであることが分かり、不安は消えていった。

こんな実験的要素を盛り込んだ神戸市民エルゴ大会は、一般参加者も募って平成14年3月31日、魚崎艇庫内、
距離500mのレースで開幕を迎える。
レース中に長年連盟を支えてこられた理事長が私のところに寄って来られた。
「Y君、このエルゴ大会、面白いね!」  (苦労が報われた瞬間である。)
皆の視線は、メインスクリーンに繰り広げられている抜きつ抜かれつのレースに注がれている。
皆のアイデア発想と行動力とPC知識で作り上げた、市漕連e−rowシステム拡張版の原形となる大会に終わった。
第3章  エルゴ大会を終えて (2nd STAGEへ)
『地域に根ざした活動の布石』となるよう企画・準備した大会であるが、残念ながら地域の参加者で溢れる大会には
ならなかった。
一方で参加頂いた会員や関係者の反響は予想以上に大きかった。
また、e-rowシステムのオペレータもこの大会が原形となって、この先発展していくことになる。
この大会を前後して無形の財産が、ドンドン市漕連内に落とし込まれていることが手に取るように分かる。
エルゴメータは、冬場のトレーニングマシンや競技大会の位置付けでしか考えていなかったが、視覚に訴えるゲーム性を
採り入れた
システムを得ることにより、今までとは違った側面を添えることができた。
例えば、大きなグランドがないと出来ない野球に対して、自分達の工夫で楽しめる『三角ベース』の草野球のようなもの。

まだまだ、e-rowシステムの機能を十分引き出せている状態でもなく、システムの可能性は計り知れない。
市漕連の中でエルゴは単なるトレーニングマシンから、『魅せるローイング』を演出する必需品と進化していく。
「このシステム、レンタルではなく我々の手元に置いておけば、色々な使い方を試せるのだが、・・・・・。」

また、大会の準備をする中で、市内3高校のエルゴメータの状態を確認し、動作しないものについても修理可能なもので
あることを確認した。 『A型エルゴメータ ディスプレイLCD部表示カケ 修理手順』 整備済み。
更に、高校生がエルゴの下に置くスライダーを自作していることを顧問の先生から伺った。
自作のレベルは横に置いて、高校生が自分達で独自に工夫していることが素晴らしい。
本物のスライダーがどんな構造なのかこの時には分からなかったが、このことをきっかけにe-rowシステムの発展性を
考えることになる。

恐るべし、『e-rowシステム効果!!!』  
第4章  e-rowシステムの投入は続く
理事M君の行動力もあって、冬場のイベントに取っておくにはもったいないe−rowシステムに更なる出番を頂く機会に
恵まれることになる。

平成14年7月9日、兵庫県JC主催の『炎の友情レガッタ』の一部に、市漕連有志でe−rowシステムを使ったエルゴ大会
を提供し、演出。(於:加古川漕艇センター)
更に主催者側で用意頂いた結果成績ランクアップシステムで更にイベントに盛り上がりを魅せた。

7月13・14日には、市漕連スタッフを離れ加古川市民レガッタのスタッフとして、公式練習日に平行して器材倉庫でエルゴ
体験会を催した。 (於:加古川漕艇センター)
ボート経験者はもちろんの事、一般市民にも興味を持って頂けるシステムであることが立証できたイベントである。

こんな急ピッチでe−rowシステムを用いたエルゴ大会・体験会をする中、レンタルではなく、自前のシステムを持ちたい
気持ちは抑えられず、7月22日の理事会決議を経て購入するところまでに漕ぎ付けるのであるが、それはもう、子供が
親に高価なオモチャをねだるような心境で嘆願した。
親も子供のオモチャで自分自身が遊ぶのを期待して、色々と思いを馳せる。
みんな、e−rowシステムの面白さを体感し、その効果に酔っていた。

8月3・4日には市民レガッタとしては日本で最大級(400クルー参加)を誇る加古川市民レガッタにe−row体験会を組み
込んで頂き、水上のレースと平行したe−rowシステム体験会を催した。
小さな子供達から大人まで色々な人達が体験し、多くの人の目に触れることになった。

8月11日には加古川漕艇センター主催のイベントとして、近隣中学生・父兄・先生を対象としたボート教室のひとつの
プログラムにe−rowシステムを用いたエルゴ体験会があり、市漕連としてお手伝いをする機会を与えて頂いた。
会場設営や機器接続、操作手順、会場での応対等、都合5回目となり、それぞれをスムーズにこなすスタッフの成長も
著しい。
これら二つのイベントはパソコン映像をプロジェクターではなく、屋外でテレビ画面に映す形で提供し、我々の経験、
今後のシステム構築のベースにもなったイベントである。
また、場所はどうであれ、『地域に根ざした活動の布石』となるような活動に結びつけば素晴らしい。
こんなところから将来のオリンピック選手が出てくることを夢見てもいいでしょう!

9月15日には神戸 魚崎艇庫にて市漕連事業のひとつである水環境フェア協賛 市民ボート教室を開催し、オーシャン
スカル体験乗艇会に平行して、e-rowシステムを用いたエルゴ体験会を行った。
当日は、近隣小中学生や父兄160人の参加で賑わい、闘志を掻き立てるBGMの中、プロジェクタースクリーンに
映し出されるエルゴレースを楽しんでもらった。
また、インストラクタとして神戸高校ボート部員が参加者に漕ぎ方をレクチャーして、体験会全体を盛り上げる役割を
担ってもらった。 参加した「小さなボート部員」が大きくなって、神戸高校ボート部員になるかも知れないね。
この体験会の準備をする中で、RGB・VIDEO変換器やAVセレクタ、ビデオコードを買い揃え、自前の設備で出来る
e−rowシステムがまた拡張していく。

大会準備中の大発見! e−rowソフトが英語で『five、four、three、two、one ROW!』とスタート号令をカウントダウン
していることに気がついた。 早速、パソコンのイヤホンジャックからオーディオアンプのAUX端子に接続して大音響での
カウントダウンでスタートの緊張感を作った。
(今まではたまたまボリュームを絞っていたので見逃していたe−rowの機能発見でした。)
 
これらのイベントをこなす中で遭遇したシステム不動作やトラブルに、ひとつずつ対応し、確実にノウハウは市漕連内に
蓄積されていっている。

年が明けた2月23日、e−rowシステムを採用した昨年のエルゴ大会をベースに、競技性の部分を発展させようと、
今後市漕連が対外的にクルーを派遣することを夢見て、2000m種目を追加した『’03神戸エルゴ大会 兼 神戸市民
ボート教室』
行った。
また、エキシビションレースとして、スライド(スターラインジャパン)で2台のエルゴマシンを連結し、e-rowシステムを接続した
ダブルペアでのレースを行い、e-rowシステムの拡張性を試した大会でもあります。
これは、来年に繋がる『新たな競技性』の部分として成長して行くでしょう。

この大会には大学生も参加し、初めて見るe-rowシステムの面白さを体感して貰い、大学キャンバスで新入生にボートを
疑似体験して貰う新人勧誘のツールとして興味を示して貰ったイベントになった。
第5章  e-rowシステムの更なる利用方法
借り物から始まった市漕連e−rowシステムであるが、自前の設備を拡張していく中で、その利用方法も様々である。

◆バック台としての拡張◆
エルゴメータを数台横に並べて、昔のバック台と同じような使い方(クルーでリズムを取り、合わせる)をしている団体は
おられるでしょう。
これにe−rowシステムを繋げれば、クルーの力の差は画面上で一目瞭然。

高校生合宿での一駒。
「e−rowシステムがあるからやってみないか? 画面上でボートレースのゲームが出来るよ。」
「そんなもの、僕達には必要ありません。」
「まあ、チョットやってみてよ。」
・・・・4人でリズムを合わせて漕いでみる。
漕ぎ始めると各ROWERの力の差により、徐々にレース状況に差が付き始めた。
遅れているROWERは、必死に挽回しようとしているが、その差は縮まらない。
4人の目付きも変わってきた。手抜きをすれば、すぐ目の前のディスプレイに映像として現れる。

「どうや、感想は?」
「面白い! この機械これからも使えるんですか?」
・・・・・星飛雄馬の『大リーグ養成ギブス』ならぬ、『ボート版養成ギブス』として使えます。

◆新人勧誘の水先案内人◆
新人勧誘は、部の存続・繁栄のための大事な仕事ですが、水辺に連れて来るまでが大仕事。
でも、学校内にエルゴメータとe-rowシステムを持ち込めば、ボートというスポーツの水先案内人の役目を果たしてくれる。
水辺に行かなくても、その場で新人を乗せて疑似体験のレースが出来、取っ掛かりは掴める。
おまけに普及用ビデオやレースの模様を上映したり、『がんばっていきまっしょい』を映したり。
マイナーなスポーツを払拭し、視覚に訴えて水辺に連れて来る手は工夫次第で色々取れる。

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