戻る

ナックル艇がやって来た!
            ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~               
第1章  雨煙の中の搬入劇
平成15年6月23日、日が変わろうとする真夜中の雨煙の中、中古ナックル8杯を積んだトラック隊がゆっくりとボート
ハウスの敷地内に入ってきた。
水環境センターのライトで浮かび上がった荷台に積載されたナックル艇のシルエットを見て、待機班から歓声が
上がった。
滝の様な豪雨の中、全員、ズブ濡れになりながら、積み下ろし作業を開始する。
雨は衰えることなく降り続けたが、ボートハウス南側駐車場へ無事収納した。
中古でもナックルフォア8艇が並んでいる姿は壮観。

競技用ボートとして役目を終え、6年間の野ざらし状態であったものを修理・再生し、もう一度役目を与えようと息を
吹き掛ける作業の序章であった。
第2章  蘇れ! 中古ナックル艇
電動サンダーによる塗料剥離作業
電動サンダーによる塗料剥離作業
テールの破損状況
テールの破損状況
   大きな穴が開いている       
船体腐食側板のトリミングと当て板補修
船体腐食側板のトリミングと
当て板補修
雨が降っても作業が出来るようにと、6月28日に修理用の作業スペースとして大型テントを張り、7月6日からは
本格的なナックル艇の修理に取り掛かる。
船底への穴など大きな損傷のないように見えた艇も、修理を始めるに当たり具に観察をしてみると、かなりの損傷が
あることがわかった。
艇の側板は、腐食が進み指先で押すと穴が開くほどの状態である。 テール部分のラダー回転部が朽ちている
ものがある。 ローロック付きリガーは何とかSUS製が8杯分揃っているが、ラダーやコーチャーズボックスは
欠落している。
一体修理を進めていって8杯の内、何杯蘇らせることが出来るのか?
艇は全て桑野造船製であるが、既にこれらを修理できる船大工もおらず、個別に部品入手することも難しい状態
である。

修理作業には人手が必要であり、木製ボートを知り尽くした先人の知恵も必要。
「Yさん、市漕連内に向けての修理大作戦広報をお願いします!」 
「ああ、出来る範囲でやってみるよ。」
今まで通信手段として培ってきたe−mail発信やPCからのiFAX送信、オーソドックスな郵便を使って役員や会員
への広報活動を行い、大修理への呼び掛けを行う。
各役員間や会員の末端まで出来るだけ情報の温度差をなくそうと、この中古ナックル艇搬入に至った経緯や今後の
計画・夢をまとめ、発信した。

修理開始1日目(6日)には市漕連内から会長を筆頭に6名、市漕連外から10名の参加があり、電動サンダーでの
外装塗料の剥離作業から取り掛かった。
みるみる内に青い船底塗料は剥がされ、木目調が浮かび上がってくる。
剥離作業者は、青い塗料粉にまみれ、全身が青色に覆われている。
これらと平行して、8艇の損傷の状態確認と船体のトリミング・修正への段取りが組まれていく。
また、欠損部品の試作や艇の馬の製作、浮力体の検討など、各人が状況を目で見て確認し、得意分野を見つけて
動き出した。
第3章  剥離作業完了  艤装品試作評価
一日に2杯のペースで進めてきた塗装剥離作業も、8杯全てを7月21日に完了した。
また、平行して進めてきたトリミング・当板作業、艤装品試作も順調な仕上がりを見せている。
ちょうど21日は、理事会をクラブハウスで行い、このナックル艇修理後の夢を語る場となった。
  『外装は、何色にしようか? やはり、神戸市のカラーのグリーンが良いのでは?』
  『神戸市民レガッタはやはり神戸市内で開催したいね!』
  『修理後のイベントに遠漕に出かけよう。 運河を抜けてHAT神戸まで行けないか探検だぁ』
  『ボート教室にも使えるし、夢は広がって行きますね!』
穴埋め補修中(会長作業)
キールの金具を外し、ネジ部に軸を
埋め込み穴埋め補修中(会長作業)
コーチャーズボックス&デルタ製作(理事長作)
コーチャーズボックス
デルタ製作(理事長作)
馬2組製作(理事長作)
馬8組製作(理事長作)
オリジナルラダー試作品
木製ラダーを見本にガス切断で鉄板をトリミング、溶接したオリジナルラダー試作品
(副会長、水域安全委員長手配)

穴が開いていたテール部も修復完了
トップやテールもニスを電動サンダーで剥離養生
第4章 船体塗装開始
8月17日、概ねトリミング作業やキールバンドの再取り付けを済ませたナックルは、塗装工程に入っていった。
『外装は、何色にしようか? やはり、神戸市のカラーのグリーンが良いのでは?』と思いを馳せていた塗装色は、結局
白色に決定した。
6年間の雨ざらしであったが、艇内の水色とニスの塗装は綺麗な状態であったので、外側とトップ・テールキャンバスを
全て白に統一することになった。
キールの継ぎ目にコーキング材を注入し、水の浸入を予防した後、ハケとローラで塗装を行う。
この作業の後、上塗りを行い真っ白なナックルフォアの完成となった。
これと前後して製作していた鉄板製ラダーも8艇分が揃った。

下地塗りの後、仕上げ塗りを行い、真っ白なナックル艇の出来上がりです。
第5章 蘇った中古ナックル艇 移送
手塩に掛けて蘇った真っ白い中古ナックル艇は、9月10日、一路川西一庫ダムを目指して移送した。
10月19日に開催される第一回川西一庫レガッタに使用するレース艇として新たな役割を与えられ運び込まれたのである。
修理の仕上がり状況を見て、先ずは4艇を選び出した。
搬入作業は、ダム管理事務所からもお手伝い頂きましたが、初めて見るナックル艇に感動している様でした。
9月13日、大会参加者の乗艇練習に先駆け、大会の安全を祈願してお神酒・塩を用意し、お清め後、一庫ダム湖面に下ろし、復活ナックル艇の進水式を行いました。

今大会初めての練習チームがやってきました。加古川市民レガッタの常連さんで、スムーズに練習をスタートできました。
ダム湖の美しさと、コンデションの良さを満喫して頂いたようです。
第6章 初舞台と今後の展望
6月23日の中古ナックル艇搬入以降、準備期間は天候に恵まれなかったが、10月19日の第1回川西一庫レガッタでの初舞台は、好天に恵まれ穏やかな日差しの中、総勢70クルー約350人が参加した大会でのリニューアルデビューとなった。市役所や病院からのクルー、川西北小学校の児童や神戸商船大学漕艇部のクルー、それに市議会議員のクルーも参加して、熱戦を繰り広げました。応援の家族や観客などで約3000人が一庫ダム周辺に来られた大会となり、川西JC,市役所関係者、ダム公園管理事務所等関係者が感激した大会に終わりました。
 
この中、全国的にも珍しい障害者を対象としたレースを1レース5レーン貸切の枠組みで行ってみました。
整調とバウにボート経験者(インストラクター)を配置し、コックス、3番、2番を障害者にポジショニングしました。
障害者を対象としたレースは、FISA世界ボート選手権等に障害者種目を含まなければならないことがFISA競漕規則に盛り込まれているが、国内でのルール等の整備は遅れている。
今回のようなレースを積み重ね、草の根ネットワークができ、国内の整備に結び付けばいいね。

8杯の中古ナックル艇は、競技用ボートとして役目を終え、6年間の野ざらし状態であったものを貰い受け、市漕連メンバーや関係者が修理に手を掛け、8杯の中古ナックル艇を手に入れた。また、この艇を活かして神戸市近隣の川西に新たなボートの拠点が出来た。
また、市漕連内部では神戸市内でのボート底辺の拡大と結び付けた新たな市民レガッタ構想を夢見ているが、その資産として今回の経験は非常に意味があるものとなった。次は、兵庫運河だぁ!!


トップに戻る